Shizuya Shiraishi

037.アイスコーヒー

2026/8/25    , ,

いつもと同じ6時15分。 洗濯物のかごを持ってベランダに出る。 あれ、空が高い。 朝日はまだ自己主張をするけれど、真夏のときの情熱はどこか失ってしまったよう。 一つに束ねた髪は首にくっつく蒸し暑さなの ...

036.風とノート

2026/8/4    

  誰もいない3-2の教室の窓際で、僕はいつものように校庭を眺めていた。 「秋の夕日はつるべ落としだ」と大きな声でサッカー部の顧問が言う。1、2年生の部員は真剣な表情で先生の指示をあおいで、 ...

035.やさしさ

2026/7/29    

今日の最高気温は39℃らしい。もはや生存ゲームだ。 会社内にいればクーラーがギンギンに効いている。パソコンがオーバーヒートしてしまっては大変だから。アプリ制作の会社において、死活問題だ。 ましてや俺が ...

034.まだ切らなかった枝

2026/7/29    

  ー今日も切らなかった。 この木には切れなかった枝がある。 一本にょろりと幹から延びる長細いささくれた枝だ。毎年春になれば広い葉をつけて、小さな白い花を少しだけ咲かせ、秋になると少しだけ紅 ...

033.剪定

2026/7/29    

人生って剪定みたいなもんだ。   木は接ぎ木だらけで、花や実をつける方法なんて人それぞれ。 誰にも教えてもらうことなんてできない。 だって人は違う木を育てているから。   自分の選 ...

032.選ばれなかった言葉

2026/8/10    ,

  「そろそろ、いこっか。遅くなったらあぶないもんね」 「うん。」   オレンジのライトアップが美しい港街を背に、私たちは帰る。 手すりに寄り添いながら眺めていた黒い海面に揺れるオ ...

031. In the crowd

2026/7/29    

  有名な甘い顔をした金髪の外国の歌手が画面に映る。 「When my hair's all but gone and my memory fades And the crowds don' ...

030.朝の手前

2026/7/29    

私は知っている。あと少しで、この空が白ずんていくことを。 私は知っている。あと少しで、夜が明けることを。 私は知っている。この少しの時間が、一番暗いことを。   星が見えない夜、私はどこに行 ...

029.影の恋人

2026/7/29    

  ああ、視界が揺らぐ。 胃のむかつきを抱きしめるようにして目だけ動かせば、オレンジの常夜灯と手元のスマートフォンの白い灯りがぼうっと入り込んでくる。 サイズの大きいタンクトップの紐が、右肩 ...

027.古本

2026/7/29    ,

  「専門書が3100円!安い!」 私は友人に紹介してもらったインターネットの古本屋さんから本を検索できるサイトを探しまわっていた。 私が欲しい本は、1970年に出版された心理学の巨匠の本。 ...