まだ空気は湿っていて冷たい
自転車を漕ぐ足は次第に冷えてくる
ビーチサンダルではなくて
靴で来ればよかったと後悔する
左のふくらはぎの筋が引っ張りあって叫ぶ
右足が必死でカバーする
よろよろと進む自転車に
何も障害物はない
鳥たちは明るく高らかに
ご来光の喜びを分かち合っている
小さな雛鳥たちのために
懸命に飛び交う命の輝き
アスファルトの隙間に生える
貧相な草花の一心不乱なきらめき
私の重い体を乗せた自転車は
ほんの数メートルでもゆらゆらとする
私もあの親鳥のようにひなに虫をくわえてくるのだ
コンビニへいってドーナッツを買うだけ
それなのにこんなにも世界が眩しい
光と風と愛に満ち溢れている
自転車から軽やかに降りる
さっきまでの重さが嘘のようだ
コンビニの光に吸い寄せられる
まるで光に入っていく虫のようだ
まっすぐにドーナッツのある棚へ行き
全種類のドーナッツというドーナッツを
かごの中に入れる
朝の人は忙しい
私がドーナッツを入れている横で
そそくさと簡単な昼食のためのものを買う
レジは列ができている
ぼうっとして待っているとすぐに呼ばれる
私は「次の方」だ
そうだ
私は親鳥でもあって「次の方」で
道端の花を見る観測者でもある
だからドーナッツを買うのは
きっと「次の方」なのだ
私は自転車にのる
さっきみた鳥と草花を横目に
真っ直ぐに進む
ああ 朝の光はこんなにも眩しかっただろうか
ドアを開ければ腹をすかせた我が子がいる
重くありながらも高なる鼓動はそこにある
「次の方」でも親鳥でもない
かあちゃんなんだろう
白石 静夜(しらいし しずや)